今年に入り、東北大のある研究室から面白そうな発表が相次いだ。詳しく話を聞こうと、生命科学研究科の経塚淳子特任教授(植物発生学)を訪ねた。
経塚さんらのグループは、シャーレの中で小さな緑を育てている。「かわいいでしょう」と見せてくれたのは、ゼニゴケ。じめじめした場所にはびこり嫌う人もいるが、ここでは貴重な研究材料だ。
近づくと、葉状体と呼ばれる平べったい緑の上に小さなカップ状の突起が見える。カップの中の芽のようなものから、どんどん無性的に繁殖する。栄養繁殖と呼ばれる増え方だ。栄養繁殖の一方、精子と卵が受精して胞子をつくる有性生殖もする。
グループは、栄養繁殖を制御しているのは、サイトカイニンという植物ホルモンだと突き止めた。環境に応じて別のホルモンが信号として伝えられ、サイトカイニンの合成量が増えると栄養繁殖が促される。光、温度、栄養などの環境要因の何が信号のきっかけになるのか研究中だという。
次に見せてもらったのは、ヒ…